今回は、全館改修により廉価格帯から高価格帯へ客層をシフトした旅館のサービス研修についてご紹介します。
こちらの旅館は、大正11年に料理旅館として創業し、100年間地域で愛されてきた老舗旅館ですが、コロナ禍により売り上げが激減。現経営者が一念発起し、世界で唯一無二の全室サウナ・温泉付き旅館を誕生させました。
オープンに向けて計画を進めていく中で、従来とは客層が大きく変わることから今まで通りのサービスではお客様を満足させることは難しいと感じ、弊社に研修のご相談をいただきました。
従業員はベテランから若手まで幅広く、いずれも改修前からいらっしゃる方々でした。
以前は、どちらかというと親しみやすさが魅力の、お客様との距離が近いサービスをされていましたが、部屋は和室から和洋室になり、食事は部屋食でお膳提供から食事処での1品出しに変わり、これまでにしたことのないサービスが至るところで求められ、従業員にとっては大きなプレッシャーを感じていました。
ハード(設計)先行の計画だったため、オペレーションの構築がされておらず、研修では駐車場への誘導からお見送りまで、ゼロからスタートしました。
今回の計画においては、プライベート感を尊重した適度な距離感を持ち合わせる必要があり、簡単なことではありませんが、研修ではそこを意識してもらいながら、何故そうした方がいいかを論理的に説明しつつ、オペレーションを構築しました。
オペレーションに合わせて3日間の研修と2か月後にフォローアップで2日間の研修を行い、従業員も自信が付いたようです。
こちらの旅館だけの傾向ではないと思いますが、ベテランの方は長年の言葉遣いや動作の癖が抜けにくいところがある反面、積極的にお客様に話しかけて会話をします。
一方で若いスタッフは言葉遣いや動作はすぐに修正できますが、お客様に対して自分たちからは話かけず、オペレーションに準じた説明のみに留まっています。
全ての従業員が親しみやすさと熱心さを持っていますが、会話の有無、量、経験の違い以上に、お客様への接し方に対するスタンスの違いを感じます。
接客において相手へ心を開くこと、感じ良さのための表情、アイコンタクト、間をとること等への意識はとても大切ですが、”スタンスを合わせる”ことの難しさが特にこの業界にはあるのではないでしょうか。
人材が不足する中で、社員と派遣社員、パート、アルバイトといった年齢差も含めて様々な方が働いている宿泊施設において研修は、”スタンスを合わせる”ことへの気づきの場にもなるのではないでしょうか。