宿泊施設においてマーケティングを行う際、自施設が立地するエリアの観光動向は非常に重要ですが、現場の方々は肌感覚でそれを把握している方も多いと感じます。
当社で事業計画策定のお手伝いをする場合は、計画の根拠となるエリアの観光動向を施設様と共有する為に、マーケット調査の一環として自治体等の観光統計を使って見える化し、分析します。
しかしながら、従来の観光統計資料は、その「新しさ」という観点からみると、活用しにくい面があります。自治体がまとめて公表するまでにはタイムラグがあり、例えば今、とある都道府県の観光統計を調べると令和5年の1年分の統計が最新となり、直近の状況はつかみにくいということが起こります 。もちろん、こういった過去の統計情報も、長期の変化を読み取る上では必要ですが、消費者の変化のスピードが速くなっている今、また今の状況を販売施策につなげたい、といった目的の場合、役に立てにくいのも事実です。
そんな中、観光庁の全国統一の基準での「旅行・観光消費動向調査」、「宿泊旅行統計調査」により、比較的直近のデータが手に入るようになったのは、調査をする側には有難いことです。あくまで観光庁からの調査票への回答者分のみのデータではあるものの、前者は、旅行者全体の同行者や年代、旅行回数、泊数、利用宿泊施設形態など、大まかな動向を半年前位まではつかむことができ、後者は県単位で(また「主な市町村」では)、従業員規模別、宿泊施設タイプ別、また居住地別の宿泊者数や稼働率等の情報が公開され、速報値では3カ月前の情報が確認できます。
ただ、それでも観光庁のデータだけでは、自社がターゲットとしているお客様がエリア内でどう動いているのかなどが掴みにくい場合も多々あります。それは観光庁の調査が基本的に県単位であることと、市町村別の情報は限られている為です。
ところが最近、地方自治体の観光統計を検索していると、直近の観光客の動きを月単位で公表するデータをよく見かけるようになりました。エリアによって取り方は異なるものの、スマートフォン等の位置情報を利用した人の動きを分析、公表しているケースが多く見受けられます。
例えば、佐賀県や鳥取県等では、温泉地別等で休日・平日別の人の動きや、性・年代別の入込の変化、宿泊の推計等を出しています。これらはしかも、直近で2ヵ月前くらいのデータが月毎に公表されているのです。
こういったデータを自社の直近のデータと照らし合わせた時、自社はどの部分がよく取り込めていて、どの部分にギャップ(=伸びしろ)があるのか、等が分かり、そこに向けて効果的な施策をうつことも可能になります。データを得る為には、過去3年前くらいまでは個別に大きな費用をかけて調査をする必要がありましたが、自治体が定期的に公表できるようになった背景には、コロナ禍を経て急速に進んだDX化があると考えます。
ところが、普段からこういった統計情報に触れていないと、その存在にも気づきにくく、施設様に聞いても案外活用されていないと感じます。
是非ご自身のエリアの統計情報を検索してもらい、こういったエリアのリアルデータを自社の施策を検討する際の一材料にしていただくことをお勧めします 。
最後に、ご存じの方も多いとは思いますが、データを活用する際に留意したいこともお伝えしておきます。
データには部分性があり、その偏りを考慮して活用する必要性があります。また、インターネットで得られる情報・データは検索すれば誰でも入手できるという手軽さが魅力ですが、その信頼性は出所によりまちまちであり、活用する際はあくまで自己判断となります。当社が業務を行う際は、提供元の信頼性を考慮しつつ、他のデータとの比較による差異も確認しながら分析を行っていますので、お気軽にご相談下さい。
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