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宿泊施設におけるタイパを重視した取り組み

 「タイパ」という言葉をよく聞きます。タイパとは「タイムパフォーマンス」の略で、費やした時間と、それによって得られた効果や満足度の対比、すなわち「時間対効果」のことです。短い時間で高い効果を得られたなら「タイムパフォーマンスが高い(良い)」、逆に長い時間をかけたのに収穫が少なければ「タイムパフォーマンスが低い(悪い)」という判断をします。

 このように情報を受取る消費者が、時間を有効的に使いたいと考える人が増えてきていることで、宿泊施設側ではより一層短い時間で多くの情報を伝え、消費者がキャッチしやすい環境を整える必要性が高くなっています。

 それでは、宿泊施設においてタイパを重視した取り組みには、どのようなものがあるでしょうか。 「販促段階でできること」「予約段階でできること」、そして「滞在中にできること」といったそれぞれのシーンがありますが、ここでは販促から予約におけるタイパを重視した取り組みについてフォーカスします。

 まず販促では、主に各種SNSへの投稿や動画配信などが挙げられますが、最近では消費者の立場からみたタイパの良い販促として、自社ホームページを中心に、チェックインからチェックアウトまでの館内での過ごし方を時系列に紹介したページを作成している施設が多くなってきています。

 例えば、旅館の滞在を時系列に沿って紹介するなら、次のようなコメントが考えられます。

まず、チェックインでは
「浴衣に着替えて非日常な体験のスタートです」

そしてお風呂のご案内では
「浴衣に着替えて小休止したあとは、お風呂へ直行です。露天風呂をはじめ、変わり風呂や炭酸泉などで大きく足を伸ばしてリラックスしてください。もちろんサウナで「ととのう」こともお忘れなく。お風呂上がりには、お休み処のフリードリンクバーでクールダウン。」

お部屋に戻って一息ついた後、夕食に関するご案内では、
「いよいよお楽しみの夕食の時間です。この地域でしか食べることのできない名物料理や、当館自慢のお料理を心ゆくまでお召し上がりください。もちろん食後のデザートも用意しております。」

夕食後から就寝までの過ごし方にもいろいろあることを伝えます。
「お腹一杯になった後はラウンジに寄って、グラスを傾けながら大人の時間を満喫したり、温泉卓球場に寄り道をして軽く汗をかいたあとは、もう一度お風呂に入ってからの就寝をおすすめします。」

翌朝も起床からチェックアウトにかけての過ごし方をご提案します。
「寝坊するのがもったいない!と思うくらいの朝風呂を楽しんでください。」
「爽快で活力ある朝食でチャージしましょう。いつもよりご飯がすすむこと間違いありません。」

そして、チェックアウト直前の最後のご案内です。
「最後に旅の思い出として、お土産処に立ち寄っておすすめの一品をゲットしてはいかが。自動精算機でチェックアウトするとスピーディーなご出発ができます。」

 中にはもっと独自のサービスや過ごし方ができる施設もあると思いますが、これらのコメントは、宿泊施設が「滞在の仕方を提案する」という販促の一つと捉えることができます。1泊で約19時間という限られた滞在時間の中で、館内施設やサービスの最大限を享受でき、とことん楽しんでいただくことで期待以上の満足感が得られる、つまり「タイパ」が良いと思えたら「この宿泊施設に行ってみよう!泊まってみよう!」というきっかけになると思います。

 このようなきっかけ作りにより、その施設に興味を持ち、予約をしようという気持ちになった人は、ほとんどがOTAや自館ホームページへ進むことになりますが、ここには多くの宿泊プランがあり、先ほどご紹介した、「おすすめの館内の過ごし方をリアルに体験できるプランはどれなのか」と迷ってしまうかもしれません。「多くのプランを設定することで、様々なお客様からのニーズに応える」という考えから、料理ランクやお部屋のグレードを組み合わせる選択肢が多くなりがちです。それは逆に消費者へ迷わせる時間を増やしてしまい、タイパを悪くしている可能性があります。

 様々なプランの中から「自分好みのものを見つける」という楽しみもありますが、タイパを重視した理想的な販促という観点で見れば、「自館がおすすめする滞在」を堪能できるプランに誘導できるよう、「プランの選択肢を極限まで絞る」という考えでも良いかもしれません。館内施設のほとんどが利用でき、様々なサービスが享受できるプランであれば、ほぼオールインクルーシブのようなプランとなり、高単価な設定が可能です。更に紹介ページから、ワンクリックでプランの予約ページにリンクできるようにすれば、よりタイパの良い予約が実現できます。

 現代は情報過多となり、情報をキャッチする側にとって、限られた時間の中でどれだけの効果や満足度が得られるかが重要です。ぜひタイパを重視した取り組みを実践されることをおすすめします。

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