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オペレーション検討はハードより先に

以前、新たに開業するバースクリニック(産婦人科)の開業前サービス研修を行いました。
立地が高級住宅街の中とあって、患者様もその周辺の住民が多く、医療的な技術などもさることながら、より洗練され、相手の立場に立ったサービスが求められます。

ドクターも、既に当地で外来専門のクリニックを開業してはいるものの、入院設備を持つクリニックの開業は初めてであり、部屋の滞在に関わるサービスでコンシェルジュを置いたり、料理メニューにも非常にこだわったりしていますが、そのオペレーション、サービスマナー指導までは難しいとのことから、当社へご依頼を頂きました。

研修を行うにあたり、サービスオペレーションをどのように行うのか、来院から入院、退院など、のシーン毎に、対応方針をヒアリングしました。

このクリニックは元々クチコミの評価が飛びぬけて高く、特にお医者様が丁寧で説明が分かり易い、また受付の方の評価も気配りがあって感じが良い、といったコメントが多く、対人サービスについては、あまり問題を感じませんでした。
この病院では患者様の不安を取り除くことをモットーとしており、日頃の対応でそれを徹底することで高評価されているため、新たなクリニックのオペレーションも、そのモットーに連動させることが望ましいと考えながら、聞き取りして行きました。

しかしながら、出来上がっているハードをみると、利用者の動きや、それに伴うオペレーションが事前にもっと詰められていたら、それに合わせてもう少し違ったハードになっていたのでは、と思う部分等もありました。

例えば、ベビーカーを押して来られる患者様。上のお子さんをベビーカーに載せ、ご自身もお腹が大きい方です。
このクリニックは、患者様は玄関で靴を脱ぎ、下足入れに靴を入れてスリッパを出し、そのスリッパを履く、という動きを想定しています。院内をきれいに保つ為の方法ではありますが、入ってきた時から患者様にはやや負担を強いることになります。
そして、ベビーカーは畳んでもらうことになりますが、受付で預かるようなスペースもなく、その置き場所は定まっていませんでした。
できているハードの制約の中で、何とか場所を決めたものの、あまりスタッフの目が行き届かない場所に患者様自身に置いてもらう形になりました。ここは、高額なベビーカーが持ち込まれる高級住宅街ですが、セキュリティ面は目をつぶらざるを得ませんでした。
また、面会の方は受付まで進まずに上階の受付へエレベーターで直接上がって頂く動きを想定していましたが、玄関近くに人はおらず、実際には玄関に入ってどちらに進むということが分かりづらいつくりになっていました。受付と玄関を隔てる自動ドアを診療時間中は開けて置くことや、サインでのご案内等がその場で検討されました。

このようにハードを作る段階で、そのサービス方針から利用者にどのような動きをしてもらうのか、その為の職員側のオペレーションや必要な場所、動線、位置関係は、といった観点はとても重要です。
折角新たに開業をするのであれば、このような観点を先に入れ込めると、よりソフトとハードが一体になるのではと感じました。

ここまでは、とあるクリニックの事例ですが、この話は、私共が日頃お手伝いをしている宿泊施設で全く同じことが言えます。
単純なお客様の動線ということだけでなく、サービス方針やその上位にある館のコンセプトと照らした時、お客様にどう行動してもらうのがいいのか、その時スタッフのオペレーションはどうあるべきか、といった視点がハードの計画段階で反映されると、お客様にとっての施設の使い勝手が大きく向上し、それに伴う人的サービスの負担も減らしつつ満足度に繋げ易くなると考えます。

既に運営している施設では、オペレーションに合わせてハードを作り変えることは難しい為、簡易な配置変更や備品の設置などでオペレーションを変える工夫をすることになりますが、施設を作る、あるいはリニューアルする際には、計画・設計段階において、サービス方針やサービスオペレーションをより具体化することをお勧めします。

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